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最高裁判所第三小法廷 昭和36年(オ)759号 判決

主文

原判決を破棄する。

被上告人の請求を棄却する。

訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

理由

上告代理人江村重蔵の上告理由第三点について。

抵当権設定の登記がなされた後に、当該不動産につき民法六〇二条所定の期間を超える賃貸借の登記がなされた場合には、民法三九五条の解釈適用上、右賃貸借は抵当権者及び抵当権実行による競落人に対抗し得ないとする、大審院判例(明治三六年六月一二日判決民録九輯七一九頁、明治三八年一月二五日判決民録一一輯四一頁、大正一二年一月一九日決定民集二巻一頁、昭和一四年九月二八日判決民集一八巻一一二一頁)及びこれと同旨の立場にある、建物賃貸借につき示した第二小法廷判決(昭和三六年六月二三日言渡民集一五巻一六八〇頁)は、変更の要を認めない。それ故、原判示不動産につき約定せられた本件賃貸借は、その登記がなされて居つても、その登記が右不動産上の原判示抵当権設定の登記後であり、しかも、民法六〇二条所定の期間を超える期間のものである以上、右抵当権者であり、右不動産の競落人である上告人に対抗し得ないものとせねばならない。右の場合、同条所定の期間の限度において賃貸借に対抗力を認めようとする原審の解釈は、当裁判所のとらないところである。

されば、原審は、右法令の解釈適用を誤つて居るのであつて、その誤りは判決に影響を及ぼすこと明らかであり、この点を指摘する論旨は理由がある。

従つて、その余の上告論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、原審の確定した事実関係によれば、被上告人の本訴請求は、すべて失当として棄却すべきものである。

よつて、民訴四〇八条、九六条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石坂修一 裁判官 河村又介 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊)

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